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偽史の帝国  “天皇の日本”はいかにして創られたか

日本人は、日本をどのような国だと思い込もうとしたのか

「近代日本人は、日本をどのような国だと思い込もうとしたのか。また、その思い込みは、日本をどこに連れていったのか――(本文より)」。
明治期、新たな統治体制を構築しようとした日本政府は、天皇を中心に据えた「偽の歴史(偽史)」を創作した。今なお日本の歴史に決定的な影響を与え続けるこの空想的な「偽史」は、いかにして出来上がり、浸透し、肥大していったのか?
本書は、「国体論」「国家神道」「教育勅語」「家族国家論」などのキーワードを軸に、政治・文化・宗教、そしてオカルト思想に至る大量の歴史的資料をひもとき、「偽史」、そして近代日本の赤裸々な姿を明らかにする。

〈目次〉

はじめに

第一章 偽史の原型 
妄想の始まり/ルーツとしての国学/天皇万国総帝説/幕末維新期の天皇観の一側面国民教化と告諭大意/岩倉具視の国体思想/国体論を巡る論争と福澤諭吉/植木枝盛の神武天皇賊王論

第二章 国体論の三大支柱
教育勅語の誕生/国体論の支柱としての憲法/神道と祭政一致/国教化に突き進む神社神道全国民の氏子化政策と神道式葬式の創出/信教の自由と神社非宗教論/祭祀と宗教の分離

第三章 精神を蝕む毒・教育勅語
教育勅語批判と礼讃/教育勅語の内容と眼目/御真影と割腹自殺/勅語の宣伝者たち

第四章 家族国家論と先祖祭祀の虚構
家族国家論という虚構/国家神道と家族国家論/先祖祭祀のルーツを巡る虚構/天皇家の先祖祭祀/明治政府がつくりだした新たな伝統

第五章 浸透する天皇教
日露戦争と国粋主義/進む国家の兵営化/与謝野晶子と大町桂月/大逆事件の意味するもの

第六章 臣民教育の徹底
「家畜の忠誠心」/『国体の本義』の刊行/銃後の戦士の養成/非常時下の『臣民の道』/神道による皇民化と「皇国臣民ノ誓詞」/創氏改名と朝鮮語の抹殺/日鮮同祖論

第七章 偽史教育とオカルト
史実の穿鑿はせず/国是となった八紘一宇/『竹内文献』と「神日本運動」/偽史に群がった人々/天皇のふたつの顔/「ただ刺せ、ただ衝け……」

第八章 孤独の王
天皇位という神輿/絶えざる補弼機関の圧力/敬神という虚構/三種の神器と国体護持/「神の裔」に対する執念/人間宣言と日本国憲法の意味

第九章 昭和から平成へ
「至尊に煩累を及ぼしたてまつらざる事」/聖断の背景/封じられた天皇謝罪/保護国・日本と逆コース/「ヒロヒトとはいったい誰だったのか」/昭和から平成へ/醜い家畜の国・日本

蛇足として

1952年北海道生まれ。作家・宗教研究家。中央大学文学部卒。雑誌・書籍編集者を経たのち、宗教を軸とした歴史・思想・文化に関する著述活動を行う。東洋の神秘思想、近代新宗教におけるカルト的教義と運動に関する著作を数多く手がけている。主な著書に『安倍晴明「簠簋内伝」現代語訳総解説』(戎
光祥出版)、『アマテラス: 真の原像を探る』『役小角読本』(以上、原書房)、『吾輩は天皇なり—熊沢天皇事件』(学研新書)、『天皇の秘教』「エソテリカ」シリーズ(以上、学研プラス)などがある。

偽史の帝国
“天皇の日本”はいかにして創られたか

著者 藤巻一保
ISBN 978-4-910080-04-8
本体価格 2200円
仕様 四六判並製 328頁
2021年4月28日発売